松江城築城時、表鬼門の石垣がいくら積んでも崩れた。城主堀尾吉晴は最も崩れの酷い個所を徹底的に掘らせたところ、頭がい骨とそれを貫く錆びた槍の穂先が現れた。吉晴はすぐさま神主を招き二夜三日にわたって大祈祷を行わせ石垣は無事築くことができた。
掘った穴からは澄んだ水が豊富に湧き出し、城内の人々の喉を潤した。
掘った所が城の中心だったので、「ギリギリ井戸」と名付けた。「ギリギリ」とは、頭のつむじを指す方言である。
典拠:小泉八雲「神々の国の首都」『知られぬ日本の面影』(Lafcadio Hearn, "The Chief City of the Province of the Gods," Glimpses of Unfamiliar Japan)
© 神田義道
松平家の藩主が亡くなったのを偲んで大亀の石像が造られた。その大亀は夜になると動き出し、城下の町で大暴れ。そして人を食らうようになった。
困り果てた住職は、大亀に説法を施した。大亀は、「私にもこの奇行を止めることができません。どうかお助けください」と、大粒の涙を流しながら訴えた。そこで、亡くなった藩主の功績を掘りこんだ石碑を大亀の背中に背負わせて、この地にしっかりと封じ込めたということだ。
典拠:小泉八雲「杵築雑記」『知られぬ日本の面影』(Lafcadio Hearn, "Notes on Kitzuki," Glimpses of Unfamiliar Japan)
© 神田義道
昔、大橋の南に松風という若い芸者がいて、相撲取りと恋仲になった。
けれども、ある侍もまた松風に思いを寄せていたが、松風は取り合わなかった。
ある夜、松風が相撲取りの家から帰る途中その侍に偶然出くわした。松風は執拗に迫る侍を振り切り、助けを求めて清光院に逃げ込んだ。嫉妬に狂った侍はとうとう松風を切りつけてしまった。
血だらけの松風は位牌堂の前で力尽きて亡くなってしまった。
その後、階段に残った血の跡は拭いても削っても消えず、そこで謡曲を歌うと松風の幽霊が現れると伝えられている。
© 神田義道
水飴を売っている小さな店に毎晩遅くなると青白い顔した着物の女が現れる。不思議に思った飴屋はある夜、後をつけていくと、その女はとある墓の前でぱっとかき消えた。途端に墓の下から赤ん坊の声が聞こえる。飴屋が墓を開けてみると生きている赤ん坊が泣いていた。その横にはあの水飴がおいてあった。
死んでまだ体の温かいうちに埋められ、墓の中で赤ん坊が生まれたのだ。母親の霊が水飴で養っていたという話。"母の愛は、死よりも強い"ということである。
典拠:小泉八雲「神々の国の首都」『知られぬ日本の面影』(Lafcadio Hearn, "The Chief City of the Province of the Gods," Glimpses of Unfamiliar Japan)
© 神田義道





